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鋼の錬金術師 NO.4

 





食事を終えた二人は、再び街を散策し始めた。
何気ない事でもそれは新鮮で楽しい。
左手で色々なものに触れてみたり、走ってみたり。できる事は何でも試した。
時間は瞬く間に過ぎていった。
街に出た時、太陽は東の空にあったが、今は赤く染まって西に傾いている。
アルフォンスは街外れの丘で、微風を感じていた。
「気持ちいい・・・」
草に横になる。緑の香りがする空気を肺一杯に吸い込み、吐き出す。
『なあ・・・アル・・・』
エドワードもアルフォンスの脇に寝転んだ。
「何、兄さん?」
鎧が拳を握る。
『・・・このままでもいいんだぜ』
アルフォンスは半身を起こし、兄に体を向けた。
「・・・いきなり何を言い出すんだ。兄さん!」
『お前が体を失った原因は俺にある。だから、お前が人間の体を望むなら・・・』
兄が失ったのは左足一本。弟が失ったのは全て。兄は自らの右腕で弟の魂を鎧に定着させた。
「兄さんらしくないよ!」
『アル・・・』
「戻るんでしょ。二人で元の体に」
『・・・・・・』
僅かにエドワードの体が反応する。
「僕は信じてる。信じてるから・・・」
アルフォンスが優しく笑った。
『・・・だな・・・』
エドワードは立ち上がる。
『そろそろ戻るか』
二人は歩き出す。
『しかし、この体も案外大変なんだなぁ』
自身の巨体を見つつ、エドワードは感想を述べる。
「そう思うなら、今度から僕の頭もう少し丁寧に扱ってよね」
『まあ、考えとくよ』
「そう言って、兄さんはすぐに忘れるんだから!」
黄昏の空に笑い声が二つ。いつまでも響いていた。


翌日。二人はそれぞれの在るべき体に戻っていた。
理論は二人の錬金術師にとってそれ程難しいものではなく、練成はスムーズに行われた。




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