鋼の錬金術師
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to NO.4
鋼の錬金術師 NO.5
翌日。二人はそれぞれの在るべき体に戻っていた。
理論は二人の錬金術師にとってそれ程難しいものではなく、練成はスムーズに行われた。
一応元に戻った事をマスタングに報告し終えた二人は、また新たな旅立ちを迎えようとしていた。
「・・・つまらん」
報告を終えていつも通りの姿で闊歩するエルリック兄弟を、窓から眺めるマスタングが呟く。
「何かおっしゃいましたか?大佐」
ホークアイが訊ねると、マスタングは腰をおろした。
「・・・もう戻ってしまうとは・・・」
机に肘をつき、大げさに溜息をつく。
「さっきから何なんだ?この人の多さは・・・」
エドワードは背中にやたら視線を感じた。
先程からすれ違う人すれ違う人全員がエドワードを期待の眼差しで見つめる。
「何か腹立つなぁ・・・」
「おーい、大将!」
煙草の煙。二人が振り返るとジャン・ハボック少尉がいた。
『ハボック少尉。おはようごさいます』
ハボックは二人を嘗め回すように視線を動かす。
「・・・普通だよな」
「何がだよ・・・」
意味深発言に、エドワードの周りの空気が張り詰める。
「いや、何、大佐がな。エルリック兄弟を見かけたら珍しいものが拝めるって言っていたから・・・」
・・・どうだ?見世物として当分このままでいる気はないか?
昨日のマスタングの言葉が脳裏によぎった。
キレたエドワードが全力で走る。
「大佐―――っ!」
怒鳴りながら、凄まじい勢いで来た道を戻るエドワード。
「何だ?」
ハボックが首をかしげる。
『失礼します』
一礼しアルフォンスも踵を返す。
『兄さんってば!』
アルフォンスは一日ぶりの体で暴走する兄を追った。
-THE END-